紙の保存コスト年間3000億を削減するe-文書法を、クラウド会計ソフトfreeeの人が世界一優しく解説!

企業において、業務のデジタル化やオフィスのペーパーレス化を考える時に、避けては通れない法律があります。「e-文書法」、正しくは「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といいます。

ビジネスにおいて必要とされる文書や帳票類をデジタルデータで保存することを認めたこの法律の始まりは2005年。IT技術による日本企業の業務効率化、競争力強化を目的に生まれました。近年はIT技術の進歩、ワークスタイルの多様化などに合わせた改正もなされ、2017年には新たな局面を迎えることでも話題となっています。

そんなe-文書法と密接に関わるサービスが、今の世の中には数多く存在します。今回はシェアNo.1を誇るクラウド会計ソフト「freee(フリー)」を運営するfreee株式会社で、プロダクトマネジャーを務める轡田(くつわだ)哲郎さんに、e-文書法について解説してもらいました。

紙の保存にかかるコストは年間3000億!その削減に立ち向かうe-文書法

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—初めまして。よろしくお願いします!いきなりですが、「e-文書法」とは何なのかをわかりやすく説明していただきたいのですが。

轡田:よろしくお願いします。いきなりですね(笑)。e-文書法というのは、要は会社にある書類を「紙」で管理するのやめましょうっていう話なんです。そのための環境を定めるのがe-文書法になります。

まず、企業では保管が義務付けられている文書がたくさんあります。e-文書法が制定されたのは2005年4月なんですが、それ以前は、これらの文書を紙で保存しなければいけなかった。「原本」を保存する必要があったんです。

保管義務がある文書というのは想像以上に多く、決算書や稟議書など社内で日々生まれるものだけでもいくつもの種類が存在します。さらに取引先から届く請求書や、経費を利用した際の領収書、これらを全て管理、保存しておく必要があったのです。

—考えただけで骨が折れそうな作業・・・。それにしても、e-文書法自体は10年以上も前にできた法律なんですね。

轡田:IT化が進んで、紙を保管することの非効率性が考えられるようになりました。当時の経団連による試算で「税務関係書類の紙による保存コストは年間約3000億円」とされたんです。その頃は、国の政策としても「e-Japan」とか「電子政府」という言葉があって、IT社会の実現へ向けて、非効率なものはなくしていきましょうという動きがあった。その一環でe-文書法も始まった経緯があります。

—3000億円とは、膨大ですね! とても信じられない・・・。

轡田:いえ、個人レベルから想像すれば、いかにコストがかかるか想像つきますよ。例えば紙で受け取った請求書や、何かを買った際のレシートも何年間も保存しなきゃいけないんです。

そういった書類は茶封筒などに貯めていって長期間保管しますよね。それって会社で見たらものすごい量になる。ある程度の量になれば大きな段ボールに入れて。それも何箱も。

最終的に倉庫が必要になったりするかもしれません。日本中でそういった管理や保存コストが発生すると考えれば3000億円は納得の数字なんです。

e-文書法の目的はコスト削減だけにあらず!「文書の電子化で、働き方自体が変わる」

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轡田:e-文書法によって、紙での保存が義務となっていた文書もスキャナを使って電子化文書として保存できるようになりました。電子化文書を「原本」として認めるので、紙を廃棄できる。先ほどお話したような保存にかかるコストは削減できます。

—倉庫なども一切いらなくなりますね。文書の電子化はその他にもメリットが多いかと思います。

轡田:探したりするのも楽ですよね。例えば税務調査が入った時なんか、紙の文書であれば、調査する側もされる側も時間がかかる。デジタルになっていれば、「いつ、何のために使ったのか」まですぐにわかるんですよね。

もう一つ加えると、会計ソフトに関わる話なんですが、従来の社内のバックオフィス、つまり管理部門の業務って、特に「紙とハンコ」が中心のワークフローになっていたんです。

例えば、何か買って領収書を受け取りました。それを経理担当者に持っていきます。経理担当者が確認したらハンコ押して、それを会計ソフトなりに記帳、記録しますよね。請求書の場合なら、この後に入金されたかを常に調べて、入金されたらまたデータとして記入する。そういうワークフローでした。

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それが、「電子化された文書で扱ってもいい」となると、担当者が請求書をデータでもらえば、経理担当者宛てですぐに承認をお願いできます。経理担当者は確認したらシステム内で承認するだけで、自動的に会計データとして取り込まれます。さらに、入金されたかどうかは、「freee」のようなサービスであれば、銀行からのデータを引っ張ってくることで「入金されました」という確認まで出来ます。

「紙」がなくなり、「紙のやり取り」もなくなるんですよね。文書を電子化することで、働き方自体が変わると思うんです。

2017年にはついに“スマホ解禁”へ。時代とともに変わるe-文書法

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轡田:e-文書法はITの進化と共に、当然、求められる内容も変化していくんですよね。なので、関連する法律の変更や規制緩和は定期的に行われています。

近年の例を挙げると、2015年の税制改正において、e-文書法に大きく関連する法律「電子帳簿保存法」が改正されました。これまでスキャン可能な領収書や契約書には「3万円までのもの」という金額基準があったのですが、2016年1月1日から、これが廃止されました。

—まさしく、規制緩和ですね。

轡田:そうですね。そしてちょうど現在、大きなターニングポイントが控えていて、2017年からは、スマホで撮ったものが電子化文書として認められるようになります。非常に大きな規制緩和と言えるでしょう。

政府・与党は従業員が経費精算のためにもらうタクシー代や飲食代などの領収書について、会社が保管する義務を2017年から緩める方針を固めた。領収書は税務調査の証拠となるため、原則7年間の保管義務がある。現在もスキャナーで読み取って電子データを保存すれば原本を捨てられるが、17年からはスマートフォン(スマホ)やデジタルカメラ(デジカメ)で撮影した場合も廃棄を認める。
(引用:日本経済新聞 2015年11月20日付)

—へぇ!さらにハードルが低くなるというか、データによる文書保存の普及が加速しそうですね。

轡田:電子帳簿保存法改正でモバイルでの撮影もOKになると、先ほどと同じ例で言うと、営業担当者が請求書を受け取りました。その直後に、パシャっと撮影して終わり、というフローになっていきます。

今の法律だと会社に持って行って、経理担当者がスキャナで電子化して、という作業が必要ですから、よりバックオフィス業務は効率化されていくという流れになるかと思います。

—あえて伺いますが、紙の文書を電子化することのデメリットってあるんですか?

轡田:少なくとも紙がいらなくなることに、大きなデメリットはないように思います。業務フローは変わりますが、これまでの業務がなくなることはあっても、新しい作業はほぼ発生しないと思いますので。

当然、e-文書法に携わる新たな役職や、新しい知識もいりません。強いて言うなら、デジタルで保存するための対応機器を揃えるコストはかかりますね。といっても、来年にはモバイル撮影でOKになるので、機器コストは心配いらないかと思いますが(笑)。

—では、文書を電子管理すると決めたとして、e-文書法適用の面で、難しさや障壁になるものはありますか?

轡田:原本を捨てても良いという法律なので、もちろん守らなければならないルールはいくつかあります。その中に「この作業とこの作業は別の人がやりなさいよ」という内容があります。

例えば「電子化を行う人」と「承認する人」が別でなくてはいけない。この運用を小規模の会社で運用するのは非常に難しいです。というのは、一人ですべての業務を回しているケースも多いですからね。

ただ、「電子帳簿保存対応は、複数人が運用に携わる必要がある」という課題も、スマホが解禁される次の電子帳簿保存法改正のタイミングで導入される、小規模事業所の特例で解決されます。税理士の方が事後検査に入るなどの特定の条件を満たせば、1人で運用してもOKになります。個人でやられているような会社は、ものすごく楽になるのではないでしょうか。

e-文書法の先にある理想。電子“化”する必要のない世界

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—3000億円の紙の保存コストを削減するべく生まれ、IT技術の進歩により改正が繰り返されてきたe-文書法ですが、今後の展望を教えてください。

轡田:今後ですか……。一つの例ですが我々freeeは、取引先に「請求書は紙で送らないでください」とはっきり伝えるようにしています。実はe-文書法の背景にある“理想”と共通しているのです。

やはり社会全体が変わっていかないと“紙をなくす”のは難しいです。実はe-文書法には「全てをデジタル化しましょう」という理想があるんです。保管義務がある文書、領収書やレシートっていうのを最初からデジタルで作ってしまえば、そもそも紙にする必要がない。

どこかで紙にするから、1回スキャンして「デジタル化する」という作業が発生する。だから「デジタル化する時に、何も変わってないよね」という仕組みや技術が必要になってしまうんです。政府も「最初からデジタルで」という動きを強く推進しているんです。

e-文書法とは、企業におけるコスト削減や競争力向上を後押しするために、正しくデジタル化の世界へと導く。そんな存在なんだと思います。

—理想の世界が実現できたらとても効率的な働き方が待っているように感じます。轡田さん、今日はありがとうございました!

次回はfreee株式会社のオフィスに潜入!

言葉のイメージから、少し難解にも思えたe-文書法ですが、企業や私たちの働き方を良い方向へ進めるために生まれたものと知れば、印象は変わってくるのではないでしょうか。

10年以上も前から、政府が本腰を入れて取り組む法律であり、IT技術の進化とともに今後も変化していきます。オフィスのペーパーレスやクラウド化など、企業における新しい働き方を模索するためにも、学んでおきたいものです。

ところで、「e-文書法」を解説していただいた轡田さんが働くオフィスの紙事情が気になり、伺ってみました。

紙ですか……。プリンターは入社以来一度も使っていないですし、トイレの紙とかそういう話ではないですよね(笑)」とのこと。

というわけで、次回はfreee株式会社のオフィスに潜入します。会社として目指すペーパーレスな世界についても、たっぷりとお話を伺います。